SMを楽しむために、知っておきたいこと
SMに興味を持つ理由は、きっと人によって様々です。
誰かに支配されてみたい。
誰かを支配してみたい。
自分という枠を壊し、知らない自分を知ってみたい。
あるいは、自分でもまだ言葉にできない何かに惹かれているのかもしれません。
どんな理由であっても私は良いと思います。
だけど、SMという世界に足を踏み入れる前に知っておいて欲しいことがあります。
それは、SMが単に肉体や精神に刺激を与えたり、受けたりするだけのものではないということ。
自分自身の欲望と向き合い、相手の意思を知り、互いを尊重すること。
Sだろうと、Mだろうと、SMは一人ではできません。
そこには人と人との関係が存在しています。
今回はSMを楽しむために知っておきたい基本的な考え方について、少し綴ってみたいと思います。

SMを楽しむために、まず知っておきたいこと
SMという言葉からは、強い刺激や特別な技術を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?
でも、何を好み、何を心地よいと感じるのかは人によって全く違います。
同じことを経験しても、ある人にとっては悦びとなり、別の人にとっては苦痛や不安になることもあります。
だからこそ、誰かの好みや経験をそのまま自分に当てはめる必要はありません。
大切なのは自分が何を求めているのかを知ろうとすること。
そして、自分とは全く別の人間、異なる感覚を持つ相手がいることを理解することです。


SM初心者が、最初に考えておきたいこと
自分は何を求めているのか
自分が何を求めているのか、実際のところはよく分からない、考えたことがないという人もいるのではないでしょうか。
支配されたいのか、支配したいのか。
痛みを求めているのか、精神的な苦しさや緊張感なのか、それともその先の癒しや解放を求めているのか。
日常から離れたいのか、普段は見せられない自分を誰かに知って欲しいのか。
欲望のかたちは一つではありません。
自分が何に惹かれ、何に抵抗を感じるのか。
そうしたことを少しずつ確かめていけば良いと私は思っています。
SMを始めるために、最初から自分の全てを明確に理解している必要はないし、分からないものに無理に答えを当てはめる必要もありません。
ただ、自分の気持ちを知ろうとする姿勢は大切にして欲しいのです。
「できること」と「したいこと」は違う
相手の期待に応えたい。
楽しんで欲しいから、頑張りたい。
そんな気持ちになることもあるかもしれません。
だけど、できることと、したいことは必ずしも同じではありません。
想像で憧れていても、実際にやってみたら耐えられなかったなんてことは、たくさんあります。
以前は望んでいたことでも、今はそうではないかもしれない。
体調や気分によって、感じ方が変わることもあります。
相手の気持ちに応えるためだけに、自分の気持ちを無視する必要はありません。
(SMを求める人の中には、相手に応えること、頑張ること自体が性癖になっている人や、自分の気持ちを無視されることが性癖という人も数多く存在するので、一概には言えないのが難しいところなのですけど)
自分が何を望んでいるのかを確かめることはSMと向き合う上で大切なことです。
分からないことは、分からないと言っていい
初めてのことに戸惑うのは、自然なことです。
何を質問すれば良いのか分からない。
自分の希望をどう伝えれば良いのか分からない。
初めてのSMの場合、何が分からないのかも分からない状態から始まることも多くあります。
知識がなければ尋ねれば良いし、不安があれば伝えれば良い。
すぐには判断できないと思うのなら、考える時間を求めたら良いのです。
分からないことを分からないと、そのまま伝えられる関係を作ること。
それは、SMを楽しむための大切な土台になります。

SMにおける同意とは何か
同意を得る、それはSMでなくとも、どんな関係であっても大切なプロセスです。
もちろん同意というのは、ただ相手の要求を受け入れることではありません。
自分が何を望み、何を望まないのかを自分自身の責任で考え、伝え、相手にも相手の意思があると認めること。
そして、お互いの意思を確かめながら、何をするのかを決めていくことです。
同意は、一度伝えれば終わりではない
当たり前の話ですが、あることに同意したからといって、その後の全てに同意したことになるわけではありません。
最初は望んでいたことでも、途中で不安になったり、気持ちが変わることは珍しいことではありません。
そんな時、その変化を伝えることはとても大切なことです。
また、自分にとって受け入れられないこと、望まないことが起きた時には、きちんと「NO」と言えることも大切なことです。
それは、自分を守るためだけでなく、相手を守ることでもあります
そして、相手から断られた時には、それに傷付く必要はないし、ただその意思を尊重したら良いだけなのです。


SMにおける言葉の大切さ
自分の気持ちを言葉にすることは、簡単ではありません。
普段は誰にも話さない、話せないような欲望であれば、なおさらではないでしょうか。
それでも、少しずつ言葉にしていくことに、きっと意味があるのです。
自分の希望や不安を伝える
相手に自分の全てを理解してもらう必要はありません。
「こういうことに興味がある」
「これは少し不安かもしれない」
「まだ自分でもよく分からない」
そんな言葉からで十分なんです。
大切なのは、自分の気持ちを相手に伝えようとすることです。
相手の話を聞き、理解しようとする
自分の希望を伝えることと同じくらいに、相手の話を聞くことも大切です。
相手が何を望み、何に不安を感じているのか。
それを知ろうとすることで、自分とは異なる感覚や価値観に気付くことがあります。
理解することと共感することは違うし、理解することと受け入れることも違います。
相手の気持ちを理解した上で、自分には受け入れられないと思えば、そう伝えたら良いのです。
お互いの違いを知り、その上で向き合うこと。
そこから、二人にとっての心地よい関係を探していけるのだと思います。

SMを楽しむために必要な信頼関係
信頼とは、相手を疑わないことでも、全てを相手に任せることでもありません。
そんな関係に憧れる人たちがいるのも理解できますが、最初からそうなれるものではありませんよね。
自分の気持ちを自由に伝えても良い、許されていると思えること。
相手を知りたい、相手の気持ちを尊重したいと思えること。
約束や決め事、大事にしたい境界線をきちんと守ってくれる・守れるとお互いに思えること。
その状態が安定して続くことが、信頼に繋がっていくのではないでしょうか。
信頼することと、何も確認せずに相手へ委ねることは違います。
安心して、自分を委ねるためには相手を知ることと、自分自身を守ることの両方が必要なのです。

SMにおける支配と服従を、どう考えるか
支配と服従。
この言葉の響きに憧れを持つ人も多いのではないでしょうか。
絶対的な支配において、支配する側が全てを決め、服従する側は仰せのまま何も考えずに従う。
そんな単純なものではありませんよね。
支配することと、相手を思い通りにすることは違う
誰かを支配したいという欲望の中には、いろいろな思いがあるのかもしれません。
相手を導きたい。
相手の反応を知りたい。
自分に委ねてもらいたい。
その形もまた人によって違うのでしょう。
けれど、相手には相手の意思があります。
それを無視してしまえば、そこにあるのは一方的な要求でしかなくなってしまうかもしれません。
相手を知り、自分の望みと相手の望みの間にどんな関係を築けるのか考えること。
支配という言葉の奥にも、そんな問いがあるのだと思います。
服従することと、自分の意思を失うことは違う
誰かに委ねたい。
導かれたい。
自分では決められないことを、誰かに預けてみたい。
そうした気持ちもSMにおいての欲望の一つの形です。
だけど、誰かに委ねることと自分の意思を失うことは、当然ながら同じではありません。
委ねたいと思うこと。
委ねる相手を選ぶこと。
委ねられる範囲を考えること。
そこには、自分自身の意思が存在しています。
支配と服従という言葉だけでは、その全てを語ることはできません。
だからこそ、私たちは、その間にあるものについて考え続けるのかもしれません。


SMを安全に楽しむために、忘れてはいけないこと
SMを楽しむためには、気持ちや関係性だけでなく、安全への配慮も欠かせません。
どれほど信頼している相手であったとしても、危険がなくなるわけではありません。
自分と相手の境界線を知る
自分の望みは、あくまで自分の望み。
相手の望みは、あくまで相手の望み。
共通する部分を掬い上げて楽しむことはできるけれど、全てが同じなわけではありません。
自分自身は、何を望み、何を望まないのか。
YESとNOの境界線。
自分の中にある境界線を少しずつ理解し、相手の境界線にも目を向けることはとても大切です。
不安や危険を感じたら、立ち止まる
始める前に同意していたとしても、途中で不安を感じることはあります。
身体に異変を感じた時、強い恐怖を感じた時、何かがおかしいと思った時。
意図したものであっても、そうでなくても、いつだって止めて良いし、無理して耐え続ける必要はありません。
事前に中止や休止の合図を決めておき、合図があった場合には行為を止めて状況を確認することも必要です。
安全に関わる具体的な知識は、雰囲気や経験だけに頼らず、信頼できる情報から学んでおきたいものです。
プレイの前後にも、相手を思いやる
始める前に気持ちや希望を確認すること。
終わった後にも身体や気持ちの状態を確かめること。
そうした時間も相手を理解するために大切なプロセスです。
どのような対応が必要なのかは、人によって異なります。
相手が何を望んでいるのかを確認し、二人に合った向き合い方を考えていくことが大切です。

SMを楽しむために、一番大切なこと
SMを楽しむために必要なのは、たくさんの知識や特別な技術だけではありません。
自分が何を求めているのかを知ること。
相手が何を望んでいるのかを理解すること。
お互いの意思を尊重し、安心して気持ちを伝えられる関係を築くこと。
その一つひとつが、SMというものやパートナーになる相手だけでなく、自分とも向き合うための土台になります。
自分の欲望を知ることは、時には自分でも知らなかった一面と出会うことでもあります。
普段は隠している感情や、言葉にすることをためらっていた願い。
それらをすぐに理解できなくても良いし、無理に肯定する必要もありません。
もちろん否定する必要もありません。
ただ、なかったことにはせず、少しずつ目を向けてみる。
そして、自分だけでなく、相手にもまた複雑な欲望、思いがあることを知っておく。
SMという世界には、さまざまな欲望のかたちがあります。
その全てを一つの言葉で説明することはできません。
だからこそ、自分を知り、相手を知り、その間に生まれるものを大切にしていきたいと思うのです。
SMを楽しむということ。
それは、ただ単純に身体と心の刺激を求めることだけではなく、自分と誰かとの関係性を知っていくことでもあるのかもしれません。
Mistress Q




